認知症の中でも最も厳しく治療薬のないのがレビー小体型認知症。私の父はこの病にかかって5年の闘病の末亡くなりました。本人がその病の進行を自覚でき、治療もないことがわかっているので、とても残酷な病気です。子供らは好き勝手に遠くにいるので、お袋が一人で看病をがんばって続けましたが、日々、壮絶さを増し、最後の1年間は施設になりました。高齢とはいえ、本人も周りも辛いものがありました。
レビー小体型認知症は主にαシヌクレインが凝集して大脳で蓄積して起きるとされてます。脳幹で起きればパーキンソンです。アルツハイマー型はアミロイドβとタウの蓄積によるとされてます。かなり対症療法的ではありますが、パーキンソン病に対する治療法は大分進歩して、30代でこの病にかかったマイケルJフォックスは、積極的に治療に取り組んだ結果、俳優として再度スクリーンに登場できるまでになりました。アルツハイマー病に対する抗体治療薬のことは前に書きました。
レビー小体型認知症はこれに対して、治療らしい治療がありません。医者もこれになるとあきらめます。父親の場合、本人の前で、治療法がなく悪くなる一方であることを散々云って、落ち込ませてしまい、ひどい医者だとお袋が怒ってました。私も医学教育に携わる人間として、こんな医師を世に出してはならないとは思います。ただ、それが医学のコンセンサスであることは否定はできません。
直りはしないまでも、治療法はあって欲しいと願います。ここで、ようやく新しい薬の可能性が出てきました。neflamapimod(ネフラマピモド)という飲み薬が米国で第二相の臨床試験において、主要目標の認知機能改善において効果が認められたそうです。こちら。
この薬は、p38αというタンパクリン酸化酵素の阻害薬です。最近わかってきたことは、この酵素が、ストレスなどで炎症を起こしたときにシナプスで増え、それがさらに炎症を起こして神経細胞を破壊するらしいということです。ならばこれを抑えればいいだろうというわけで出てきたのがこの阻害剤。
細胞レベルでの試験では、アルツハイマーで損傷することがわかっているエンドサイトーシスの機能を正常に戻す作用があることが示されてるそうです(この論文は発見できず)。そこで、これをアルツハイマーの患者7名(125mg)と9名(40mg)で試したところがこちら。
上が短期記憶、下がエピソード記憶。12週間のテストです。記憶のテストで明らかに量に応じて改善が見られてます。ただし、認知力には変化は見られなかたそうです。この結果、数が少ないことと、なぜbase laneのところで投与群に差があるのか、わかりませんが。