2020年4月30日木曜日

高血圧の薬、レムデシビル臨床試験の結果

前にアンジオテンシン受容体拮抗薬系の高血圧の薬、オルメサルタン、ニューロタンなどが、当初は、COVID受容体を増やす可能性が指摘されて、感染リスクが上がるかもしれない、といわれました。だけど、そんなことはないという速報が出てましたが、今回、まだ査読はすんでませんがデータが公開されました。https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.24.20077875v1
ARBというのがアンジオテンシン受容体拮抗薬です。これは610人の感染者のうちで、8.69%がARBを飲んでいた、ということで、これは全体の割合が15.38%である事からすると、単純にいえば、感染しにくい、ように見えます。逆にカルシウムチャネル阻害薬、アムロジピンなどですが、これはそのしたのCCBで、その数値が逆転していて、感染しやすいのか??というデータにはなってます。

他に影響を与えるファクターもあるでしょうし、これくらいの違いで一概には言えませんが、少なくとも、オルメサルタンは飲んでてもいいらしい、ということはわかります。

また、もう一つ公表された注目の研究、レムデシビルの効果についてですが、やはりかつて言われたほど有効ではないようですが、回復までの期間を飲まなかったときの15日から11日に縮め、効いてはいます。ただ死亡率には差はなかったそうです。こちらは米国の国立アレルギー感染症研究所(NIAID)によるphaseIIIの試験で、おそらくこれまでで一番信用おけるもの。

これで米国政府はこれを標準薬にしようといってます。一方。中国での臨床試験では、患者が集まらず途中で中止になったのですが、その経過報告でも死亡率に差はなかったという話。ギリアド社はこれを承認させたい、米国としても同じ、と考えると、ある程度は効くだろうけど、当初期待したほどではない、というところと思えます。なお、副作用としては、これにはアビガンのような催奇性もふくめてほとんどでてきてません。ただ、精子が減少するという結果はたしかギリアドから出ています。

理屈として、レムデシビルは新型コロナの親戚のMARSのウイルスでは、そのRNA複製酵素にATPよりもよく取り込まれることが示されていて(https://www.jbc.org/content/early/2020/02/24/jbc.AC120.013056)、効いてもおかしくはないです。

ただ、死亡率が変わらないというのはがっかり。そういえば、あまり話題になってないのですが、ガスター10と同じ有効成分を持つ薬を飲んでる人では死亡率は半減するというデータがあります。これは6212人のデータで、サイエンス誌に報告されてます。
https://www.sciencemag.org/news/2020/04/new-york-clinical-trial-quietly-tests-heartburn-remedy-against-coronavirus

割と信頼はおけそうです。飲んでると死亡率は約14% で飲まなかった人は別の胸焼け薬オメプラゾールを飲んだ人の死亡率27%よりも低いという話で(ただし有意差はまだないらしい)、これをうけて、NYではガスター10の有効成分ファモチジンを静注しようという試験がはじまっているそうです。ファモチジンは実際にウイルスと結合するらしい。ただ、この話、コントロールとして用いた集団がオメプラゾールを飲んだ人で、この死亡率がちょっと高すぎるのでは、という気もします。COVIDでの死亡率は中国でもここまで高くないので、この話はよくわかりません。

2020年4月19日日曜日

リモートデスクトップで頻繁にフリーズ

ながらくリモートデスクトップを使ってますが、Windows10になって去年くらいから妙に接続が不安定になりました。つながるのは問題ないですが、すぐにフリーズ状態になり、一旦、リモートデスクトップ接続をやりなおさないといけなくなってました。そうならないときもありますが、フリーズすることの方が多く、かなりめんどくさい。

そこで探したところWDDMグラフィックドライバが原因という記事がありました。 https://teratail.com/questions/211028

これの設定にはローカルグループポリシーエディタというのを開いて、設定を変える必要があります。ところが、私のノートはWIndows10homeで、これは使えない。ところが、実はhomeでもこれが使えるようにできるのです。こちら
https://laboradian.com/enable-gpedit-on-win10home/

簡単なバッチファイルを作って、これでグループポリシーに関連するパッケージを追加するとのこと。つまり、homeでもこれに関するプログラムはファイルとして入ってはいるがインストールされてない状態のようです。このサイトにあるenable-gpedit.batというバッチファイルを走らせると、次々にいくつかの機能がOSに追加されます。

これだけで、ローカルグループポリシーエディタが使えるようになり、Win+R キーで「ファイル名を指定して実行」を表示させて、gpedit.mscを入れたら、ローカルグループポリシーエディタが出てきます。

そこで、これのローカルコンピューター ポリシー」→「コンピューターの構成」→「管理用テンプレート」→「Windows コンポーネント」→「リモート デスクトップサービス」→「リモート デスクトップ セッションホスト」→「リモートセッション環境」

を開いて、


のところが未構成になってるのを上のように無効、にして、再起動します。立ち上がりのときにしばらく時間がかかり、不安になりましたが、無事に起動し、リモートデスクトップを使ったところ、以前のようにすんなり安定につながるようになりました。

この現象、解決はしましたが、ちょっと謎で、必ずしもWindows10homeだからすべてなるというものでもないようです。ともかく、これで家にいながら、ラボにおいたパソコンで安定した操作が再びできるようになりました。

絶対、すぐに忘れるので備忘録。

2020年4月18日土曜日

その筋の人

6台目暴力団で抗争禁止指令が出た件で、元組員で今は堅気の作家、竹垣悟氏によるこのコメント

「暴力団員の多くは入れ墨が入っており、毛穴を防ぐので汗が出ず、皮膚呼吸がしにくい。だから肺、心臓など呼吸器系が弱くなる傾向がある。それに日常生活の中で暴飲暴食は当たり前。規則正しい生活は刑務所か拘置所にいる時だけです。私も入れ墨が入っていますが、一般の方と比較して体力は弱いと感じます。」

「新型コロナウイルス感染防止は多人数で集まらないことが大事とされている。暴力団のみなさんも肩で風切って歩き、飲みに行くようなことはせず、自宅で養生。社会に迷惑をかけないようにしてほしい」

思わず笑ってしまいます。そういえば、明らかにその筋の人が救急に来ていて、いかにもな感じの女性が付き添ってました。医者は大変です。どういう人でも診ないといけません。いろいろと武勇伝のある医者もいるようです。

2020年4月5日日曜日

反物質

311の頃、バナナ1本にどれだけ放射性カリウムが含まれるか、という話をよくしてました。飽きたのでそんなのを話すこともなくなりましたが、知らなかったのは、そのバナナの放射性カリウムK40から、バナナ一本につき75分に一つの割合で陽電子、反物質が出ているそうです。。

ごくありふれた日常の中に、物理の本でしかお目にかからないような現象、量子的効果や、時空の特性、などが、ぽろっとこぼれてくることがあります。こういうのがとても楽しい。バナナから出る反電子は、バナナを爆発させることもなく、負の電荷を持つ電子にぶつかって静かに消滅します。

この話はこちらの記事にあったものです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200331-00010000-wired-sctch&p=1

反物質がほんとに存在することは、なんと1932年、第二次大戦の前に見出されていたそうです。ただ、それを大量に得ることはできず、数が少ないと測定が難しいので、その性質を調べることは困難、なので、今まで報告されてなかったとか。

それには、反粒子を沢山集めて動かないようにすれば良いわけで、冷やせばいいだろうと。これは言うは易く、の典型で、超低温にして観察するのはアクロバット的な工夫が要ります。今回、上のNEWSに紹介されてるNatureに出た研究では、研究者たちは、CERNなどの機械を使って、絶対温度から0.5度高い極低温の数センチの空間をつくり、その中に500個くらいの反水素を長い時間トラップことに成功しました。そこでそのスペクトルを測ったという話です。

その結果では、反水素の特性は普通の水素と同じで、いわゆる標準理論に沿ったもので、有効数字12桁(!)という精度においても、両者に違いは見られなかったそうです。この世界では、電子は負に荷電してますが、なぜ陽に帯電した反電子がこの世ではほとんどないのかを説明する手がかりは得られなかったとのこと。

ちょっとがっかりですが、ただ、この方法では反物質を24時間もトラップできるそうなので、様々な性質について知る事ができるはず。理論では、反物質間では重力が逆転するという予測もあるとか。わくわくします。

2020年4月4日土曜日

地平線のパトロール

「夢の中で受けた屈辱は、醒めてからの現実では晴らすことができないし、醒めてからの現実の痛みは、夢の中で癒すことができない。二つの世界の間には鉄道も橋もなく、たださむざむとした断絶があり、それをむすぼうとする者は眠りの虜になるしかない。」


どうも、COVIDにメンタルやられてるなあと、寺山修司を読んでます。引用した文章は「地平線のパトロール」から。どうせ引きこもるなら、彼の作品を全部読んでおこうと思い立ち、まだ読んでないのがどれだけあるか調べて片端から注文してたら、気がついたら17冊になってしまいました。

要は、COVIDを言い訳にして買っただけのような気もするけど、ともかく、読めば読むほど、ものすごい才能。こんな天才が、他にもごろごろいて、60年代に青春を過ごした人たちはどれだけ幸運だったろう。


「来るあてのない手紙を待っていることがある。
引っ越したばかりで、だれにも住所を教えていないのに郵便配達夫のベルがきこえると、思わず玄関まで見にいってみるときの、あの期待は何に根ざしているのだろう。
・・・・・・
人はみな、受け取らない手紙のことばかり考えながら、ひっそりと自分の世界状態を守っているのである。・・・・・・」