311の頃、バナナ1本にどれだけ放射性カリウムが含まれるか、という話をよくしてました。飽きたのでそんなのを話すこともなくなりましたが、知らなかったのは、そのバナナの放射性カリウムK40から、バナナ一本につき75分に一つの割合で陽電子、反物質が出ているそうです。。
ごくありふれた日常の中に、物理の本でしかお目にかからないような現象、量子的効果や、時空の特性、などが、ぽろっとこぼれてくることがあります。こういうのがとても楽しい。バナナから出る反電子は、バナナを爆発させることもなく、負の電荷を持つ電子にぶつかって静かに消滅します。
この話はこちらの記事にあったものです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200331-00010000-wired-sctch&p=1
反物質がほんとに存在することは、なんと1932年、第二次大戦の前に見出されていたそうです。ただ、それを大量に得ることはできず、数が少ないと測定が難しいので、その性質を調べることは困難、なので、今まで報告されてなかったとか。
それには、反粒子を沢山集めて動かないようにすれば良いわけで、冷やせばいいだろうと。これは言うは易く、の典型で、超低温にして観察するのはアクロバット的な工夫が要ります。今回、上のNEWSに紹介されてるNatureに出た研究では、研究者たちは、CERNなどの機械を使って、絶対温度から0.5度高い極低温の数センチの空間をつくり、その中に500個くらいの反水素を長い時間トラップことに成功しました。そこでそのスペクトルを測ったという話です。
その結果では、反水素の特性は普通の水素と同じで、いわゆる標準理論に沿ったもので、有効数字12桁(!)という精度においても、両者に違いは見られなかったそうです。この世界では、電子は負に荷電してますが、なぜ陽に帯電した反電子がこの世ではほとんどないのかを説明する手がかりは得られなかったとのこと。
ちょっとがっかりですが、ただ、この方法では反物質を24時間もトラップできるそうなので、様々な性質について知る事ができるはず。理論では、反物質間では重力が逆転するという予測もあるとか。わくわくします。