2020年6月27日土曜日

もったいない

人が儲けたお金の使い方にどうこういうのは野暮というものですが、100億円という金額をサイエンスのために出そうというのなら、もっと有効な出し方があろうにと思ってしまいます。柳井氏の京大2ノーベル賞受賞者への寄付の話。それなりに成果は出すでしょうが、これから新しいサイエンスを生むような投資ではありません。ご本人が言っておられるように、安いiPSの作り方などと聞くとがっかりします。

そもそもそういうことに良い人材が集まるわけもないし、そんな研究を行っても、若者の次の職探しは厳しい。何か一つの分野に対して大きなお金を出すということを文科省はよくやってますが、これで採用された若手が任期が切れて次のポストが見つからず、犠牲者がかなり出ます。今回の寄付金に対象を絞ったものにするとその被害はもっと大きなものになるでしょう。

100億あれば、生命科学の世界では、もっと大事なこと、人間の世界を深い意味で高めてくれる数多くの可能性に大きな投資ができます。斬新な新しい科学の可能性に投資を続けるビル・ゲイツに比べて、あまりに貧しい。ユニクロらしいといえばそうなのだけど、日本人としてがっかりします。これをやるなら、大学でなく、ユニクロの中に研究所を作って正規職員として雇用して業務でやってほしい。

日本にはパトロンとして科学を支えるという伝統がありません。科学はほとんど国が支えてきました。芸術も同じ。これがお金持ちの寄付によって大きな発展を遂げてきている欧米との大きな違いです。そういう歴史があるだけ、寄付する側にも高い見識が育ってます。この辺の格差は、こういう学問を取り入れてからの歴史の浅さかもしれません。

企業が儲けたお金をどう使ってもそれは自由ですが、それで若者と、もしかしたらそのサイエンスでできたかもしれない可能性を奪うことになるのであれば、これはよろしくない。両方のプロジェクトも国から膨大な研究費がすでに支給されていて、さらに残りのことをやらせるのは、採用された若者がとても気の毒です。