COVID-19が武漢のP4施設から流出したウイルスの可能性があるという、いかにもありがちな話がでてます。よく出る話ですが、その中で、ウイルス専門家が、ウイルスの中のスパイク蛋白の中には遺伝子組み換えに使うpShuttle-SNベクターの配列が含まれている、と述べたという記事がありました。
https://www.epochtimes.jp/p/2020/02/51700.html
そもそも、そんなのは配列を見ればすぐわかることです。COVID19の全ゲノム配列は
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/1798174254
にあります。スパイク蛋白は
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NC_045512.2?report=genbank&from=21563&to=25384
です。pShuttle-SNは
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/57791694
にあります。これはSarsウイルスのスパイクの変異体を含むもので、ラットにアデノウイルスを使って感染させるのに使ったようです。こんなことやってたんだというのはさておき。
相同性を調べてみました。蛋白レベルでコウモリのコロナウイルスとの比較
そっくり。やはりこうもり由来だ。先の記事がいってる相同性がなく不思議だといってる配列はこの最下段の5アミノ酸の挿入のこと?他に数アミノ酸の範囲で変異してますが、これくらいは普通。
また、アミノ酸をコードするRNAのコドンをいじった跡があるとありますが、これは自然変異の際によく見られること。アミノ酸は変えない方が生存する確率が増えるからこうなります。
COVID19のスパイク蛋白の配列にはpShuttle-SNの痕跡らしきものを調べても(もちろんこのベクターはSarsウイルスのスパイクをコードするので、スパイク蛋白同士の相同性はありますが)、組み替え生物由来なら連続した塩基配列の断片があるはずだけど、それも見当たらず。COVID19のほかの遺伝子配列と比較しても「痕跡」は見つからず。
一体この記事は何を言ってるのだろう??そもそも、この記事、ちゃんと読むとかなり理解不能です。記者がわかってないことを書くとそうなることはよくあるので、最初はできの悪い学生の答案のような読み方でキーワードだけ拾ってストーリーをつくって読んでましたが、まともに読むとかなりおかしい。この記事の中で唯一判読できる内容は上のpSuttle-SNとの相同性がCOVIDのスパイクと似たところがあるという事で、だけどこれはない。
なんだこれとこのサイトをよく見ると、大紀元時報、真実と伝統。。。なんだこれは。こういう時期、いろんな怪しげなところからもっともらしいのが出てきます。気をつけねば。
それはともかく、この新型コロナのスパイク蛋白のクライオEMでの構造の論文がでてましたが、これから予測するとウイルスが結合する、細胞表面にあるangiotensin converting enzyme2への親和性がsarsと比べると一桁高いとか。肺炎になったときの症状が重く、回復しにくいのはこのせいかもしれない。
追記
日本で最大の学会のひとつ、日本薬学会が3月の終わりの年会を中止することになりました。他にもいくつも中止するところが出てきています。薬学会の場合、大学関係者だけでなく、特に薬剤師、製薬会社関係が全国から参加するので、リスクが高いという判断でした。311の震災に次いで、10年もしないうちに2回目の中止となりました。