高校の頃、ジャズが好きな友達がいて、よく一緒にジャズ喫茶でつるんでました。ミッション系の割と自由な高校で、可能な限り、合法的に授業を抜け出して、というのが可能な時代でした。ただ、我々があまりにも制度を活用して謳歌したもので、次の学年からはそれが改訂されて進学校のように厳しくなったようで、後輩からは恨まれました。
通っていたのは、コンボ。天神のごちゃごちゃしたビルの2階のとっても狭い、細長いお店。小さくても、ここは福岡のジャズのメッカでした。友達はものすごくジャズに詳しい男で、フリージャズにいたる系譜は彼からしっかりたたき込まれました。
彼は他の音楽はほとんど聞いてなかったと思いますが、ある日、これ、いいよ、と持ってきたLPがありました。その頃よく聞いていた当時の日本のフリージャズを代表していた山下洋輔と森山威男、坂田明らが、シンガーソングライターとして独自の活動をしていた浅川マキと共演したアルバム。その最後の曲は彼らの敬愛するコルトレーン・カルテットのリズムで演奏され、坂田明の吹くアルトが、すごい。
たしかに、これはいいよね、と何度も聞いてました。だけどそのうち受験になり、大学も別になって、1年の夏にあったのが最後でした。だけど、この曲は、そのリズムと坂田明のサックスはいつまでも頭の中で響いていました。
時が経ち、この曲を聴きたいと思っても、アルバムも曲名も覚えてません。だけど、浅川マキと山下洋輔トリオらとの演奏なので、わからないはずもないだろうとさがしたものの、らしいものが見つからず。キーワードとして使ったのが、round-go-round, という印象的なリフレインでした。なんだろう、round go aroundか round go downなとか思ってもみましたが。らしいものはなく。
さらに月日が経ち、昨夜、ふと、すごくこれが聞きたくなって確実な山下洋輔と森山威男、坂田明と浅川マキというキーワードで検索すると、らしいのは3枚しかありません。聞いたのは普通に流通していたLPで海賊版ではなかったので。どうも記憶にある他の曲からするとこれはMAKI VIというもののはず。とすると、最後の曲は、ボロと古鉄、しかない。
今の時代、YouTubeです。この曲、でてました。
https://www.youtube.com/watch?v=YjrZxdeJ2JY
なんと、これです。ほぼ半世紀、探してた曲。しかし、これのどこがround go aroundなのか。rags and old ironを聞き間違ってました。。。だけどこれを何度聞いてもこの単語になりません。確かに、最後のdは頭の中でつけてるだけで、実際には聞こえてなく、この単語にして聞いてるところが問題。オリジナルのニーナ・シモンをきいてもやはり同じように聞こえます。ironを正しく聞いてないのですね。
あの頃の空気が、この曲で一気によみがえってきました。今聞いても、この曲はとても素晴らしい。このシンバルが常時打ち鳴らされ、揺れるようなリズム、かつてエルビン・ジョーンズ、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリスンとコルトレーンが創り上げたスタイルに浅川マキがとってもはまっています。そして、坂田明のソロ。まさに絶唱です。あの時代が作り出した、奇跡のような音楽です。そして半世紀にわたる勘違い。。。
追記
そうか、oldのdとironがくっついて[da~n]となり、ragsのgと次のoがつながったので、go downと聞こえるわけか。今度、nativeに聞かせてみよう。