2020年8月7日金曜日

ACE2受容体は健康な肺にはほとんどないらしい+ワクチンの話

COVID-19ウイルスが結合するとされるACE2分子は肺など呼吸器に発現してるとばかり思ってました。ところが、Molecular Systems Biologyに今回発表されたスウェーデン・Uppsala大の詳細な研究によると、実は気道~肺にはほとんど発現してないとか。
https://www.embopress.org/doi/full/10.15252/msb.20209610

ではなぜこのウイルスが呼吸困難を起こすのか?ウイルスは確かに感染者では気道下部にある肺胞II型細胞に多く見られます。ACE2受容体は、実はウイルス感染すると急に発現が増えるようです。これはインターフェロンによって起こされ、これはウイルス感染そのものによって起きると、彼らは考えています。おそらく上気道のACE2受容体にウイルスが少しついて、そこでインターフェロンを出させてACE2受容体を激増させ、ウイルスが肺の中にどんどん入っていく、というイメージでしょうか。この辺はこちらの紹介記事の方がわかりやすい。
https://www.embopress.org/doi/abs/10.15252/msb.20209610

問題は、一体、インターフェロンは治療に使えるものなのか、あるいは逆に危険なのか。結果的には、先に書いたように、たとえば武漢での医療人へのインターフェロンの鼻からの噴霧が有効と思われる結果などでいいような感じですが、逆に、実は理屈からいくと、また、マウスの実験
https://rupress.org/jem/article/217/12/e20201241/151999/

では、逆に、悪いはず。理屈、というのは今までの知見に基づいた、という意味なので、単に知識が足らないだけという事もあります。だけど、ここまで逆になるのは珍しい。このウイルスの謎の一つです。


ところで。英国のアストラゼネカ/oxfordから1億本以上のワクチンを供給してもらうという契約を日本が結んだとかいう話がでてます。これは組み替えアデノウイルスを使うタイプです。これまでこのような遺伝子組み換えウイルスがワクチンとして使われたことはありません。国全体で臨床試験をやるつもりでしょうか。普通ならこの種類のがワクチンとして認可されることはないはずなのだけど。

ワクチンの場合、そのリスクがどれくらいなのかの判断はとても難しく、短期的な安全性はもちろん確認できてもそれが長期的に有効か、安全なのかは長い時間がかかります。それで今回やってしまえばわかるだろう、ということなのでしょうが。

一方で米国のモデルナ/NIHが進めてるタイプは、前も書いたmRNAで、これもこれまで使われたことはないですが、理屈の上では一番安全性が高い。ファイザーもこちらのを作ってます。

ただ、ワクチンとして一番安全そうなのは、従来からのワクチン開発で行われてきたように、不活性ウイルスを用いるもので、これは中国が先を行ってます。ワクチンをうつならこちらだな。だけど、自分ではうたないと思いますが。