こんな曲があったとは。。。この前Murder most foulについて書いて以来、Bob Dylanの詩を読み返して、あらためて惹かれてました。
YoutubeのなかにおいてあるBlind Willie McTellという曲。これは1983年に発表されたアルバムInfidels収録時に録音されたものです。ですがなぜかこの中には収められず、Bootleg seriesの中に収録されて世に出ました。このアルバムは聞いたはずだけど、そのときは気がつかなかった。
例によって彼の英語は難しいので、「廃墟のレコード屋さん」の訳を借ります(この方もきっとdesolation lawが好きに違いない)。これはBlind Willie McTellという盲目のブルースシンガーを歌った曲です。知らなかった。何度も聞いて、読み返しています。
私はフクロウのホーホーという歌声を聴いた
彼らがテントを取り壊しているときに
荒地の木々の上の星たちが
彼の唯一の観客だった
濃灰色のジプシーの娘たちは
その羽毛を十分に見せびらかすことができる
だが誰もブラインド・ウィリー・マクテルのようにブルースを歌うことはできない
大農園が燃えているのを目にして
鞭の裂ける音を聞いて
花咲く木蓮の甘い匂いを嗅いで
奴隷船の亡霊たちを見て
私にはそれら部族たちの呻きが聞こえる
葬儀屋のベルが聞こえる
誰もブラインド・ウィリー・マクテルのようにはブルースを歌えない
この2段目はoriginalはこちら
See them big plantations burning
Hear the cracking of the whips
Smell that sweet magnolia blooming
See the ghosts of slavery ships
I can hear them tribes a-moaning
Hear the undertaker's bell
Nobody can sing the blues
Like Blind Willie McTell
なかでも、この部分
I can hear them tribes a-moaning
Hear the undertaker's bell
にはしびれます。
1983年、まだ私が日本にいて早く海外に行きたいなあと空ばかり眺めてた頃、こんな曲を彼は歌ってました。この、
nobody can sing the blues
Like Blind Willie McTell
というリフを持ついかにもブルースらしいブルースは1983年の彼には珍しく、彼が元々もっていたざらざらした輝きに満ちてます。とりわけこの詩が素晴らしい。なんという果てのない想像力なのか。
先の記事を書いてたとき、どこかで見つけたゴシップ的なサイトで、彼はツアーを終わると、打ち上げに昂じるバンドの仲間を尻目に、いつもさっさとひとりでバスに乗り込み、黙って次の目的地に向かう、という記事を読みました。
次から次に溢れてくるとほうもない言葉でつむがれ、言葉によってさらにわきあがってくる物語のなかで、彼は次から次へのその世界を大勢のバンドメンバーと、だけどひとりで旅しているのでしょう。その孤独が、なにか胸を打ちます。